朝倉家の双子、恋をします!〜めぐり来る季節をあなたと〜
一瞬雲りかけた京の顔が一気に晴れた。
撫子と食べに行く代わりに、私が泊まりにくる、と正しく認識したのだろう。

その後、私達は供花の請求書を受け取り、焼香のための列に並んだ。

焼香が始まると、列が進み出した。
ふと、親族席を見ると、どこかで見た覚えのある女性がいた。
誰だったっけ?
お通夜の席の親族にしては、完璧なメイクをしている。とても綺麗な人だ。
こちらを見ている気がする。
……ちょっとずれてる?
私の隣に視線が向かっているようだ。
撫子の知り合いかな……。

順番が回ってきたのでお焼香を済ませ、親族に体を向ける。
喪主は奥様だけど、おそらく現会長である故人の実弟が最前列に出ている。
社葬なんだから、これが正解なのかな?
その横には私と同じくらいの年齢の男性が。
息子さんかな?
私には特に今まで接点のなかった方々なので、ビジネス的な型通りのお辞儀をし、その場を後にする。

やっぱり、その綺麗な人は、撫子を見ていた。
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