朝倉家の双子、恋をします!〜めぐり来る季節をあなたと〜
「で、4人でパートに分かれて、母さんの伴奏に合わせて歌った動画を撮る。
次に、各パートごとの伴奏付き動画を撮る。
ここまでが今日やることだ」

「…わかった。 で? 」

「賢人くんが合唱団の全員の連絡先を知ってるんだ。
今日撮った動画をSNSに鍵付きでアップし、個々にフォロー申請してもらうよう連絡を入れてもらう。
動画を見て、どっちのパートを選ぶか選択してもらい、そのまま動画を元に、各自自宅で練習する。
ひょっとしたらパートが偏るかもしないから、そこは臨機応変に朝倉家でパートチェンジする。
ここまでOK? 」

私も真もこくりと頷く。

「で、実際に集まって練習は出来ないから、zoomで招集かけようかと思ったんだけど、声が反響すると思うんだ。通信環境によってはズレが出るし。
という訳で、合唱はぶっつけ本番! 」

「…マジか…かなり危険だな…」

「うん。だから、曲は全員に馴染みのある曲にしようと思う」

「あ、そういえば何を歌うの? 」

「あめのきさき」

母が突然聖歌の曲名を言った。
幼稚園でよく歌った聖歌だ。誰でも歌える。

「これはプロローグ的にあなた達4人で歌って。
その次が合唱団ね。
曲目はヘンデルの『メサイア』第44番ハレルヤ」

ハレルヤ。
なるほど、主の復活を祝う曲だけど、お祝いの歌だし、誰でも知っている。聖堂館でもよく歌ったわ。
ただ、しばらく声を出していなかったら、なかなか難しいかもしれないけど。
選曲としては完璧だ。

「…待って母さん、それを今から録画するの? 」

珍しく真が焦っている。
ハレルヤは長いからね。

「何時間かかるんだよ!?」

「大丈夫よ。今日は真だけだもの。
環と宣はもう撮影済。泉も家にいるんだからいつだって撮影出来るしね」

「マジか…。勘弁してよ…」

文句を言ってるけど、真のことだ。
母にピアノの前に立たされたら、ちゃんと役割は果たすのだろう。
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