朝倉家の双子、恋をします!〜めぐり来る季節をあなたと〜
「その8月のブライダルフェスティバルってね、ホテルでするブライダルフェアと違って、かなり面白い試みなの。
特設ステージでは、ウェディングソングを持ち歌にするアーティストを沢山呼んで、いわゆるフェスが行われるの。
だから、結婚式を挙げる予定の人ばかりじゃなくて、アーティストの歌を聴きたい人もたくさん来るのよ。
それに、大きな会場の各ブースでは、ブライダルに関係する企業がこぞってお祭りイベントを展開するの。
うちも普段なら公開しないような打掛けを展示するわ。
ほら、例の航空ファンに人気の打掛けも!」

「え! あの人気の打掛け!?
実物が見られるの?」

「あれね、あまりに人気だから、同じような感じでもう1枚作ったの。
新作の方は今回初めてのお披露目よ。
桐野屋の目玉はそれなの」

「うわ……見たい」

「泉、最終日は来れるんじゃない?
花ちゃんのお式のあと、休み取ってるんでしょう?」

京と夢の国に行けたらな~と思ってたんだけど、今の話だと京は仕事だわ。何故黙っているのだろう……。
シャイな真が言えないでいるのか。
もしくは、夢を叶えるために学業に専念する!
と宣言した撫子の意地のためか。

2人をよく知る私には、そのどちらもアリだと思った。

二人の関係を教えてもらえないのは、正直寂しかった。
でもそれ以上に、私が介入して二人の仲がギクシャクしたら……と思うと、それは絶対に避けたかった。

そう思って、ひっそりと傍観することにしたのだ。
きっと、時が来れば2人から話があるはずだ。
それまで待とうと……。

私の兄が、いい加減な気持ちで妹の親友に手を出すような人だとは思っていない。
きっと、ちゃんと考えているはずだ。

そんなことを考えていたら、話はブライダルフェスティバルのことに戻っていた。
なら、私も見に行こうかな……。
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