朝倉家の双子、恋をします!〜めぐり来る季節をあなたと〜
彼は少し驚いたようだが、俺が副社長の息子だということに気付いていたようだ。

「君が言わなくて良かったよ」

「でも……花の……あの動画の淹れ方は研究の成果だとわかっていました。
それなのに何も言えなかったんです……」

「…残念だけど、君が副社長の息子だとしても、まだ君には力がない。
社会人1年目だし、朝倉コーヒーの社員としても未熟だ。
そんな君の言葉は響かないだろう」

「……っ !!」

「悪く思わないでくれ。
今ここで躓いてほしくないんだよ。
実はね、花ちゃんのことはよく知っているんだ。
僕が大阪の店舗勤務だった時、彼女はうちでアルバイトをしてたんだよ。
店先に立つのが大好きで、コーヒーの研究が大好きで、そう言うの全部見てたから、彼らの言い分にちょっとムッとしてしまったんだ」

花を知ってたのか……

「……君はまだまだこれからだよ。
今ここでしこりを残すようなことはしなくていい。
そう言うのは年長者にまかせておけって」

そう言って俺の肩をポンっと叩き、帰っていった。

それからも、おれは自分自身の価値を見いだせない日が続いた。
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