朝倉家の双子、恋をします!〜めぐり来る季節をあなたと〜
花ちゃんへの歌のサプライズは、大成功だった。
親世代を含めた聖堂館出身の皆んなが、それぞれこの日のために自主練してきたのがよくわかる。
それに、音源が母の伴奏で統一されていたからか、曲の間合いにズレが全くなかったのだ。

懐かしい……。

聖堂館はとにかく歌に溢れた学校だった。
小さな頃から慣れ親しんだ聖歌。
時を経ても、一度歌い出せばあの頃に一気に引き戻される。

親友撫子との出会い。
京がくれた粘土細工。
双子戦士と騒がれた小中学校時代。
中学高校と続けた聖歌隊の練習の後は、撫子といつもスイーツ巡りしたっけ。

きっと私だけじゃない。
ここにいる仲間それぞれが、あの頃の思い出を、心の中に描いている事だろう。

サプライズに驚いた花ちゃんは涙ぐんでいた。
今は離れていても、私達の故郷は変わらない。花ちゃんには、いつでも帰ることができる故郷があるの。
わかってくれたかな……。






その後、京は花ちゃんに直接フィギュアの大きな箱を渡しに行き、幕張へと帰って行った。
私は、明日必ず行くからと約束をして、京を見送った。
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