愛するあなたへ〜blue roseを私にください
「どこで食べよっかな・・・」
いつもの凜とした顔つきと違って、どこか楽しそうで微笑む姿に、どきどきする。
彼女さんは、いつもこの笑顔を見ながら、過ごしているんだと思うと、胸がぎゅっとなった。
春花!好きになったらダメなんだから!
そう自分に言い聞かせた。

「あそこに入ろうか」
指差したお店は、落ち着いた雰囲気の和食屋さんだった。
「はい、和食大好きです」

2人で近くまで歩いていると
「あれ?翔じゃない?」
すれ違った綺麗な女性が、社長の名前を呼んだ。
「なんだ、明子か」
「なんだはないでしょ、ただの関係じゃないのに。この近くなの?事務所」
「あぁ、まぁな」
「隣の方は・・・まさかとは思うけど、彼女じゃないわよね?」
明子さんという女性は私を足下から、鼻で笑うかのように見上げた。
「彼女だよ」
社長は、私の肩を抱き寄せて、その女性を睨みつけた。
「ふーん、翔がこういうタイプの子をねぇ。ふっ、仕事もそうだけど、彼女の好みも落ちたものね。じゃあ、私、クライアントと約束があるから失礼するわ」
綺麗な女性は、社長と私を見下したような目で、酷い言葉を掛けた後、去って行った。
「ごめんね、気を悪くしたよね。美味しいものご馳走するから」
社長は微笑んでいたけど、とても悲しそうに見えた。

食事を注文し、社長が改めて
「日比野さん、さっきは本当に申し訳なかったね。俺の事なのに、日比野さんを巻き込んでしまった」
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