愛するあなたへ〜blue roseを私にください
そう言いながら、社長が深々と頭を下げた。
「あのー、さっきの明子さん、って方は・・・」
「あぁ、昔付き合ってた彼女なんだ」
「えっ?」
「付き合った頃は、あんな感じじゃなかったんだけど・・・」

とっさに私を彼女だと言ったのは、昔の彼女に対して、ただの当てつけだったのかなぁ。
そう思うと胸が苦しくなった。
でも、会社のこと、社員のことを考えている社長の姿を知っているだけに、社長のことを悪く言うのは許せなかった。

「俺は何言われてもいいけど、日比野さんにあんな失礼なことを言うなんて」
「いえ、元カノさんか知らないですけど、今の社長を知らないくせに、あんな事言うなんて、許せません!」

社長は目をまん丸にしたかと思うと、吹き出して笑った。
「はははっ!あんなに酷いこと言われたのに、俺の心配してくれるなんて」
「だって、腹が立ってしまって」
ずっと笑っていた社長は
「ありがとう。救われたよ」
優しく微笑んでくれた。

丁度料理が運ばれて来て、2人の前に置かれた。
「日比野さん、お疲れ様」
「お疲れ様です。いただきます」
社長は、今日手伝った仕事の取引先について、簡単に内容を教えてくれた。
熱く語る社長の輝く目に、引き込まれていく。
ずっと話を聞いていたかった。

食事も終わり、社長の車で家の前まで送ってもらった。
「社長、家まで送ってもらって、ありがとうございます」
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