愛するあなたへ〜blue roseを私にください
恥ずかしくて、社長を起こしてしまうんじゃないかと思うくらいに体は熱くなり、心臓が跳ね上がってどきどきしている。
どうしよう・・・
しばらく固まっていると社長の腕は、力が抜けたように私から離れ、開放された。

偶然とはいえ、社長に包み込まれて嬉しかった・・・
でもそれ以上に、彼女さんと間違えたんだと思うと胸が張り裂けそうだった。
いつも今みたいに、優しく包み込まれているのかと思うと、叶わぬ思いのやり場のなさに胸が苦しくなった。

早くこの部屋からでないと。
きっと涙が止まらなくなる。
社長に一礼して、静かに部屋を出て行った。

あの出来事から、私は平然を装って仕事に打ち込み、半月が過ぎた。

社長の仕事と、コンサル部からの依頼も増え、帰りが遅くなってしまった。
「日比野さん、お疲れ様です。まだ帰らないの?」
「曽根さん、お疲れ様です。もうコンサル部も皆さん帰ったんですね」
「もう僕と日比野さんだけだよ。社長はまだいるんだね」
「はい、私、もう少ししたら帰ります。社長には、最後だって声掛けて帰りますね」
曽根さんに伝えた後、パソコンに向かって仕事の続きをし始めると、曽根さんが近づいて来た。
「日比野さんて、社長のこと好きなの?」
「えっ?」
突然の言葉に、驚きを隠せなかった。
「やっぱりそうなんだね。でも社長には婚約者がいるよ」
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