愛するあなたへ〜blue roseを私にください
工場にはたくさん人が来ていたし、覚えていない。
「お父さん、私、今ね」
「春花、すまない!こんなこと頼む親で本当にすまない!お見合いだけでもしてくれないか!その間に何とか考えるから」
「何とか考えるって言っても、どうにか出来るの?」
「それは・・・」
「出来ないに決まってるじゃない!」
私は部屋を飛び出して、今は物置になってしまった2階の自分の部屋に、駆け上がって行った。

せっかく翔さんと心が通じ合ったのに、お見合いなんて嫌だ。
それに、事情からしても、お見合いして断る選択なんてきっと出来ない。

しばらくして、部屋のドアがノックされた。
「姉ちゃん、俺だけど、入っていい?」
ドアを開けて入ってきたのは、弟の純太だった。
「純太・・・」
「ごめんな、姉ちゃん、帰って来てこんな話になって」
「純太、どうしようもないの?」
「父さんは、工場を手放す覚悟をしたんだ。姉ちゃんの人生を犠牲にするわけにはいかないって。父さんは内緒で、皆の転職先も探してたんだ。でも、若い人達は見つかるけど、定年を過ぎた人達は、技術力は高くても、今の給与を出せるだけの仕事が見つからなかったんだ」
「お父さん・・・」
「波月商事以外の取引会社からは、ここの製品はいいから、辞めないで欲しいって言われてね」

翔さんの優しい笑顔が目に浮かぶ。
ようやく愛し合えたのに、どうしてなの・・・
「姉ちゃん・・・」
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