愛するあなたへ〜blue roseを私にください
お昼前になる頃、受付から来客を知らせるコール音が鳴った。
「お待ちくださいませ」
佐野さんが受付に出迎えに行き、来客の女性と話をしながら入ってきた。
「近くまで来て、翔さんに連絡したら、事務所にいるって聞いたものですから」
「社長も喜びますよ。ご案内しますね」

その女性は私を見て、にっこりと微笑む。
「こんにちは」
綺麗でスタイルも良く、凜とした中に女性らしさがあり、女性が見惚れるほどの美女を間近で見たように思う。
「もしかして、婚約者の人かなぁ?」

しばらくすると、社長室から2人が楽しそうに会話をしながら出てきた。

モデル雑誌に載っていそうな2人が話す姿は、小柄で、丸顔のくっきり目がより幼く見える私では、想像できない世界だった。

そして、あんなに優しい目で女性と会話する社長を見たのは初めてだった。
職場では見せない、その笑顔にどきっとした。
やっぱり婚約者の人なんだ・・・

「佐野さん、奈織ちゃんとお昼食べに行きますね。午後の来客までには戻りますから」
「はい、緑川さんも行ってらっしゃい」
「佐野さん、ありがとうございます。あの、そちらの方は・・・?」
「日比野です。宜しくお願いします」
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