愛するあなたへ〜blue roseを私にください
部屋を出ると青羽社長と緑川さん、佐野さんが出迎えてくれて、佐野さんはハンカチで目頭を押さえていた。

「素晴らしかったよ。五感に響いたプレゼンだった」
「青羽社長のお言葉があったからです。ありがとうございます」
「お疲れ様。日比野さん、感動したわ」
「緑川さん、沢山お世話になって、何てお礼を言っていいか・・・」
結果はどうなるか分からないけど、自分1人では人前で話す事さえ出来なかった。
「皆さんのお陰です。ありがとうございました」
「日比野さんの素直さよ」
佐野さんは相変わらず、ハンカチで目頭を押さえて、私の背中をさすった。

結果は従業員投票となり、翔羽が受けることになった。
「完敗だな。認めるよ、日比野さん、翔が溺愛するはずだ」
発表の後、翔さんのお父さん、羽瀬社長が私の傍に来て声を掛けた。
「どうだ、うちに来て、プレゼンターとして仕事しないか?」
「いえ、私はもう人前に出て話は・・・」
翔さんのことが無かったら、人前で話すことなんてしなかった。
「冗談じゃ無い。俺の手から離すことはないよ」
翔さんは、私の肩を抱き寄せて、羽瀬社長を牽制した。
「あまり箱入りにして、才能を埋めるなよ。日比野さん、失礼なことを言って、申し訳なかったね。今度また翔と遊びに来なさい。家内も喜ぶよ。あの後、かなり怒られたからね」
「ありがとうございます。是非、お邪魔します」
「じゃあな、翔」
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