最大級の愛を君に


『実はさっきから羽柴くんへの嫌がらせの電話が止まなくて。営業妨害でちょっと困ってるの。あなた借金してるんだって?うちとしてはほらお客さんにまで変な噂なんか広まったらやっていけないでしょう?申し訳ないけど今日でやめてもらいたいの。予定が出てる今月分と来月分の給料はちゃんと払うから。何も力になれなくてごめんなさいね。じゃあね』










ピッ、プーップーッ…







電話を切ってどれくらいの時間が経っただろう。


何も考えれなくてただじっとここの景色を見下ろしていた。


さっきまで頭の上で輝いていた太陽がもうすでに夕日に変わっていた。


今は10月の半ばだから16時とか?



もう10月かぁ。
あと少しで今年も終わり。



あと少し、あとちょっと。



そうやっていつも、いつも。



…いつも。



サァッ


後ろで風に背中を押された感覚。





…ああ。


ここから飛び降りて母さんのところに行こうかな。



もう疲れた。



目の前にある塀に足を跨ぐ。


手を離せばきっと楽になる。



次また風が吹いたら手を離そう。




そう思い、目を閉じたつぎの瞬間……






ズサーーッッ




後ろで葉っぱの擦れる大きな音が聞こえて振り向く。



振り向いた先に、生け垣から頭と腕だけがズッポリ飛び出している。


なっ、どっ、えっ?!


動揺して手を離してしまい、やばい落ちる…と思ったが、崖側ではなく反対に落ちて顔を地面に思いっきりぶつけた。


「いっててて…」


じゃなくて、アレはなんだ?!


きっとアレは生物学的には人間だ。

頭があるしそれに腕もある。


そろっと近寄ってみると、いきなり腕らしきものが動き出し頭から下の胴体が生け垣から姿を現した。


女の子……?

ど、どうしたらそんなところからここに出ようとしたのか神経が分からん。


「あ、あの!」


「うわっ!」


いきなり声をかけられたのにびっくりして、思わず叫んでしまった。


髪の毛に葉っぱをいっぱいくっつけて、高級そうな服を着ているその子は俺にジリジリ近づいて来る。

そして俺の手を取り涙目でこう言った。



「わ、私を誘拐して下さい!!」




「………え?」







ああ神様…


俺って前世世界でも滅ぼしたんですか……?


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