最大級の愛を君に
目の前にいる花山院家専属の執事、要(かなめ)に淡々と今日のスケジュールの説明をされる。
ショックを受けている私の斜め後ろでガジャンと食器が落ちる音が聞こえた。
「こ、こ、こ、こ…」
顔を真っ青にしているこの男も花山院家専属の執事で千景(ちかげ)。
要は私が生まれる前から花山院家に務めていて、千景は私が昔拾ってきた謂わば訳ありな経緯でこの花山院家別宅の執事になった。
「結李様失礼致しました。今すぐ新しいものをお持ちいたします。
…千景、落とした食器と新しい物を交換してこい」
「いや、ちょっと待って!食事どころじゃない!」
食器なんてどーでもいい!
だから、今っ!
「…要、もう一度聞くわ。
今日のスケジュールを教えてくれる?」
「本日のスケジュールは11時45分昼食、15時から3日後の婚約パーティーに同席するお相手を見つける為のお見合いがございます」
「こっ」
婚約者?お見合い?!
パーティー?!
「どうゆうこと?!」
バンッ
机を思いっきりたたき、要を睨みつける。
昔から知ってる。要にはこれが効かない。
「旦那様からのご命令でございます。結李様は御年16歳と言うことで、そのままの意味でございます」
なんてったってこの男は、仮にもご主人様が困ってるってのに顔色ひとつ変えずにいられるのよ!
「これは旦那様が決められた事になります。今回も黙って従うのが宜しいかと」
唇がワナワナ震えて言葉を見失う。
ひどい。ひどすぎる。
「い、行かないわ!先方にそう伝えてちょうだい」
「とりあえず形だけでもご協力を」
なんて言いくるめられて今に至る。
こんな事のために外出するなんて。
年に何回もないのに。
「結李様、お元気出して下さい。
私はいつでも結李様の味方です」
不貞腐れている私に千景は膝をついてご機嫌取りをしてくる。
でもごめんね。今は私以外みんな敵なの。
大戦争なの。
「…さっき、要に何も言えなかったくせに」
「ギクッ」
「ちなみにさっき千景が落としたあのフォーク、今はもう出回ってない品物よ。
弁償はいいから、なんとか逃げ口を─」
「結李様、ご準備出来たなら行きましょう」
「……要のばか」
私の抵抗も虚しく、外にある車に乗せられてしまった。