最大級の愛を君に
家に帰るとポストにパンパンの郵便物が入っているのが目に入った。
母さんが亡くなってから毎日が忙しくてそういえば見る暇もなかったなと思いポストの扉を開いた。
母さんが残してくれたのは俺名義の預金通帳とこの一軒家だ。
母方の親戚がお葬式とかお墓とかの難しい事は全部やってくれた。
祖父母はもう亡くなっていて母さんは一人っ子だった為、遠い親戚にしか頼る人がいなかった。
葬式中誰一人会った事ない人に俺は頭を下げて過ごした。
正直それがとてもしんどかった。
もう高校生だし自分で働ける年だからって引き取るとか仕送りとか必要ないですと断って、元々住んでいたこの家にまた帰ってきた。
母さんが知らない間に貯めていてくれたこのお金と家を守ろう、そう決めた。
自分でここで生きていくことを選んだ。
…母さん、ただいま。
いつも玄関の扉を開けると、スリッパのぱたぱたと床を叩く音してリビングのドアが開く。
それに決まって「ただいまはー?」と聞かれる。
反抗期が全盛期だった俺にはそれが少し小っ恥ずかしくて、ハイハイって流してたけど。
母さんは絶対、「おかえりなさい」って笑って言ってくれた。
そんなごく普通の、どこにでもある日常が何よりも好きだった。