いつかキミが消えたとしても
何度目かの「なぁ」の後に肩を叩かれて、ようやく振り向いた。


そこに立っていたのは航で、至近距離で見るとその大きさは予想異常だった。


返事をする前に悲鳴をあげてしみそうになり、慌ててそれを飲み込んだ。


「え、えっと、なに?」


隣の席でもないのに声をかけてきた航にしどろもどりになりながら答える。


他のクラスメートたちも航が自分から声をかけていることで、注目しているのがわかった。


悪目立ちしたくない舞は、ついうつむいて話を早く切り上げようとしてしまう。


「久しぶりだな」


その言葉に舞は「え?」と、顔をあげた。


目の前には優しそうに微笑む航がいる。


その笑顔を見ていると記憶の奥底をくすぐられているような、懐かしくなるような、不思議な感覚がした。
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