いつかキミが消えたとしても
「えっと、ごめんなさい。どこかでお会いしましたか?」


同級生だけれどつい敬語になってしまう。


普段からあまり生徒たちと会話していないし、緊張して背中に汗が流れていく。


「なんだ覚えてないのか。俺だよ、青っちだよ」


航は自分を指差してそう言った。


「青っち……」


舞が呟いたその瞬間、忘れていた記憶が津波のように襲いかかってきた。


青っち。


あれは小学校4年生の頃だった。


舞は4年1組で、青っちも4年1組の生徒だった。


その頃青っちはとても小さくて細くて、まるで女の子みたいな男の子だった。


それが原因で他の男子たちから男女だとからかわれて、そのたびに青っちは泣いていたのだ。


『ちょっと、やめなよ!』


教室でからかわれているのを見てほっておけなかったのが舞だ。


舞は他の子たちよりも少しだけ背が高くて、男子にも負けていなかった。
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