この恋は、『悪』くない。
10月15日
【日直】
樽崎(ならさき)
山咲(やまさき)
「日誌、オレ書くよ」
「あ、い、いいです
私、どーせヒマなので…」
「オレもヒマだし…」
「晴輝〜!帰るー?」
「あー、オレ日直だから先帰って!」
「晴輝、マジメー」
「とか言って、先輩とデートなんじゃね?」
「ありえる!
オレら、どーする?」
「ゲーセン行く?」
「行く行く!」
「私もー」
「じゃーなー、晴輝〜」
「バイバーイ♡晴輝」
樽崎くん行かなくていいのかな?
楢崎くんは無言で
日誌にペンを走らせた
怒ってる?
「あ、あの、樽崎くんも遊びに行ってください
ホントに、私、やるんで…」
「行かない
あーゆーの、苦手…」
静かになった教室に
樽崎くんの声が響いた
苦手?
いつも中心にいて
そんなふうには見えないけどな
「え、でも…みんな楢崎くんのこと…」
「ホントは、苦手…
うるさいし、家で音楽聴いてる方が好き」
ふーん…そーなんだ…
意外
それとも
ホントにこの後
先輩とデートだったり?
日誌を書く樽崎くんを見た
真剣に真面目に日誌を書いてる
こんな人だっけ?
いつも睨まれるけど
こんなに綺麗な顔してるんだ
コレは女子にモテるでしょうね
「山咲は、いつも何読んでんの?
オレら、いつもうるさくてごめん」
樽崎くんが急に日誌から顔を上げた
え…
私のメガネの厚いレンズ越しに
樽崎くんと目が合って
息が止まった
「…え、わ、私…」
「うるさくて本に集中できないだろ
ホント、ごめん」
気にしてくれてたの?
「あ、いえ…
別にそんなたいしたのじゃないので…」
「オレも本読んでみよーかな…
本読んでる人って
いろんなこと知ってるよね」
そーでもないけど…
「なんか、オススメある?」
ないです
毎日パーティーみたいな樽崎くん達にしたら
私が読んでる世界なんて
ちっぽけだよ
「ん?どーした?
フ…山咲、フリーズした」
あ、笑った
今日は
睨まれない
ホントだ
笑うと
かわいい
「わ、私は、そんな、ぜんぜん…」
「フ…山咲と初めて話したね」
確かに…
畏れ多くて?
恐れ多くて○
楢崎くんと話すなんて
無理です
「な、樽崎くんは
音楽…何聴いてるんですか?」
私から質問しちゃった
なにしてんだろ
私
「え、オレ?
聴いてみる?今度貸すよ」
「え、私は…」
ほら、だから
余計なこと聞くから
「興味ないか…
よし!書いた!帰ろ」
ほら、だから
「あ、ありがとうございました!」
コミニケーション能力低い
会話続かなかった