この恋は、『悪』くない。

樽崎くんは

ご飯を食べると

ソファーでアメを抱いて

テレビを見てる



いつもの光景



その隣に

私はいつも座る



いつもと変わらない



この距離にも慣れた



でも…



今日は樽崎くん

やっぱり違う



いつもなら

自然と私に触れてくれるのに

今日は触れてくれない



近すぎてこわいと思った時もあったのに

触れたいのに触れるのがこわい時もあったのに



いつも

アメを撫でながら

もう片方の手を

私に絡ませてくるようになった



時折甘えて

不意にキスしてくる



いつの間にか

それが当たり前になってたんだ



調子に乗ると

どんどんエスカレートして

押し倒されたこともある



自慢というか

惚気けです



今は

触れてくれないと

不安になる



今日は

どーしたの?



テレビの前で

ボーッとしてる



樽崎くん

私が隣にいること

気付いてる?



「あ、この俳優さん好き
カッコイイよね
最近、人気あるんだよ」



「ん?あ、へー…」



やっぱり

いつもと違う



いつもなら

沙和、浮気!とか言うのに…



テレビもついてるだけで見てないし

私の話も上の空



テレビのチャンネルを変えた



「樽崎くん
いつもこっち見てなかった?」



「…あー、そーそー、コレコレ…」



「毎週、楽しみにしてたよね?」



「んー、そぉそぉ…
さすが、沙和」



樽崎くんの好きなチャンネルに変えたのに

その後も樽崎くんは

心ここにあらず



さっき言おうとしてた事って

何かな?



そんな重大なこと?



私がこれから話そうとしてる事より?



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