この恋は、『悪』くない。

1時間番組が終わって

樽崎くんがテレビを消した



「沙和、さっき何か言おうとしてなかった?」



「んー…
樽崎くんも何か話あった?」



「んー…」



樽崎くんは

つれない返事をして

ゆっくり私の手をとった



やっと

触れてくれた



でも

いつもと違う



いつもなら

もっとベタベタしてくるのに…



握った私の手を

優しくなぞった



「…なに?」



「沙和の手、綺麗だな…」



「なに?今日、どぉしたの?」



「んー…
やっぱ、わかんねー」



「え?」



樽崎くんの一言で

酷く不安になった



「オレ、無理かな…
やっぱ、オレじゃねーのかな…」



無理?

何が?



私に触れてる

樽崎くんの指先からも

なんとなく不安が伝わってくる



私たち

無理ってこと?



別れようとか…

そんなこと?



昨日まで

そんな気配1ミリも感じなかったのに…



気付かなかったの

私だけかな?



樽崎くんは

ずっと思ってたの?



やっぱり

私じゃ無理だって



優しいから

そんな素振り

私に見せないようにしてたのかな?



いつから

無理って思ってた?

戻れるならそこまで戻りたい



戻ってまたやり直せるなら

やり直したい



それとも

そろそろ飽きた?



そぉ言えば昨日も

一緒に寝たのに

おやすみってキスして

その後すぐ寝ちゃった



疲れてるのかな?って思ってたけど

ホントは他の人がよくなった?



あんなに好きって言ってくれたのに

ずっと好きだったって言ってくれたのに



信じてたのは

私だけだった?



いろんな事が

頭の中を駆け巡った



「沙和…」



樽崎くんに呼ばれて

黙って息を呑んだ



返事をしたら

すべてが終わってしまう気がして…



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