この恋は、『悪』くない。

もぉ

ダメなのかな?



耐えられなくて

ギュッて心臓を掴んだら

樽崎くんの声がした



「沙和…

オレと、結婚しよ」



「…え…」



予期しない言葉が

私の耳を通り抜けた



真っ白になる



目の前にいる樽崎くんは

真っ直ぐ私を見てた



「30まで、あと4年
待ってらんねー

沙和…
絶対、幸せにするから…」



いつもの樽崎くんじゃない



でも

そこから

いつもの優しい声が聴こえてくる



心臓を掴んだ手が

少し緩む



「うん…私、幸せだよ…」



だから…



だから

樽崎くん



「今より、幸せにする

これ、占いより当たるから…
真剣だから、オレ


沙和…

オレと、結婚してください」



さっき通り抜けた言葉と

同じ言葉が

今度は心に留まる



心に留まった言葉が

熱くなる



熱くなった塊が

込み上げて

涙になって溢れた



「アレ…おかしいな…

最近、私ね
情緒不安定なの

急に不安になったり
変にハイテンションだったり

なんだろう…
自分でもよくわかんなくてね…」



樽崎くんの言葉は

たぶん



今まで生きてきた中で

1番嬉しい言葉だ



なのに

泣くなんて…



「オレが先に言わない方がよかった?
沙和も言いたいことあっただろ」



樽崎くんが

優しく聞いてくれた



話したいのに

返事をしたいのに

涙が邪魔をする



返事しなきゃ

また樽崎くんは

いなくなってしまうかもしれない


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