この恋は、『悪』くない。

樽崎くんがペンを取ってきた



「沙和、手出して…」



「んー…ハイ…」



ペンが私の掌をなぞった



「…くすぐったい…」



掌を見たら

[♡]が書いてあった



「次、沙和書いて…」



樽崎くんが私に手を出した



「…やめろ…くすぐったい…」



「自分が書いてって言ったんでしょ!
ハイ!書いたよ」



[大好き♡]



「フ…やめろ…
恥ずかしいわ、くすぐったい…」



「ハハハ…」



照れるね



「沙和、また手貸して…」



「うん…」



今度は

なんて書いてくれるの?



「沙和…愛してる」



文字じゃなくて

言葉で伝わってきた



それから



私の左の薬指が光ってた



胸がいっぱいになる



愛してる



その言葉が

くすぐったくて



でも

嬉しくて

幸せだなって実感する



楢崎くんの手を

そっと取って



[私も愛してる]

[一生一緒にいてね]



樽崎くんの

掌に書いた



相変わらず私は

言葉にするのが苦手



樽崎くんも照れてる?



きっと照れてるよね



でも

ちゃんと

愛してるって

言ってくれた



樽崎くんの掌に

また書いた



[キスして]



樽崎くんは

何も言わないで



ーーーーー



私を抱き寄せて

キスしてくれた



「ありがと…幸せです」



「沙和がドレス着れるうちに結婚式挙げよ」



「樽崎くんのタキシード姿が見れるんだ」



「オレはいつもこのスタイルだから…」



Tシャツ、ハーフパンツ



「ハハ…」



「恥ずかしいけど
沙和が見たいならタキシード着てやる」



両親に挨拶してくれた時のスーツ姿

カッコよかったよ



「私、こんなに幸せでいいのかな?」



「いいだろ
約束したし…」



「なんか、幸せすぎて、こわくなる」



「フ…またこわがらせた?

これから
もっと幸せにするから…

樽崎さん」



「ハハハ…」
「フ…」



樽崎 沙和



なんか

照れるね



幸せって

くすぐったい



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