この恋は、『悪』くない。
「で、今の彼氏と結婚すんの?」
森谷さんが白ワインを飲みながら言った
「んー…どぉですかね…」
「不思議だよね
そんなに好きとか言って
結婚ていうと悩むんだよね
でも、ホント悩んだ方がいいよ」
「なんですか?
森谷さん、経験あるんですか?
結婚しそうな彼女いたんですか?」
私は
黙って
ふたりの話を聞いてた
白ワイン越しに
森谷さんが透ける
「オレのラーメン好きは社内で有名なのに
知らないの?」
「だから、知ってますよ
ラーメン…」
「オレ、離婚してるんだ
23の時」
「え!」
隣の同期の驚いた声で
私もワイングラスから
森谷さんに目を移した
「あ、澤村やっとこっち見た
興味ある?
オレのコイバナ」
「あ、いえ…」
「沙和だけじゃなくて
誰でもそーゆー話は興味ありますよ!
しかも23歳って、若すぎません?
まさか、森谷さん子供います?」
「いないよ
彼女のこと、ただただ大好きで
子供できたわけじゃないけど
大学の時に結婚した
…
同じ年でふたりとも学生だった
好きだったらどーにかなると思ってた
…
ふたり大学通いながらバイトして
アパートに住んで…
幸せだった
…
けど、ふたりとも就職したら
すれ違いが多くてさ…
…
一緒にいれる時間が
だんだん少なくなって…
…
オレ、結構ずっと一緒にいたい人かも…」
「へー…
そんなこと聞いたら
もっと結婚できなくなりますけど」
「うん
けど、悩んでもいいけど
失敗してみるのもいいよ
別に失敗とか思ってないけどね」
知らなかった森谷さんを
知った
森谷さん
奥さんいたことあるんだ
どんな人だったんだろう
きっと
すごく好きだったんだろうな…
「もぉ…
なんか真面目な話になったじゃないですか!
あ、今好きな子とは
どんな感じなんですか?」
森谷さん
私のことは
どれくらい好きって思っててくれたんだろう?
「んー…好きだよ
オレはね
…
けど、恋愛ってお互いが好きじゃないと
成り立たないわけでさ
…
まぁ、オレも
適当に付き合える年齢じゃないし
真剣に考えてたよ」
真剣に…
その気持ちに
私は
Noと答えた