あの日溺れた海は、
その日の部活終わり。
おじいちゃんに鍵を返しに職員室に向かっている途中、ふと、藤堂先生に渡すように頼まれた写真のことを思い出し、カバンの中からそれが入ってる封筒を出した。
先生はどんな顔をして受け取るのかな。
いらない、なんて言われたらどうしよう。
あんなにズケズケとモノを言う先生だ。あり得ないことはない。
その封筒をじっと見つめながら深いため息をついた。
職員室のドアを開け、おじいちゃんのところへ鍵を返却しに行くついでに、斜め向かいの藤堂先生の席をチラリと見るとそこに先生はいなかった。
夏休みだし、いないのかなと思いながらおじいちゃんに聞いてみた。
「あれ、おじいちゃん、藤堂先生は?」
「ああ、もう帰られたよ。どうしたの?何か用でもあったかな?」
「んー…大丈夫です!ありがとうございます。さようなら」
少し言葉を濁すわたしをおじいちゃんは不思議そうな顔で見ていたが、さようならと返すと、特に気にすることもなく再び机に体を向けた。
まあいつでもいいか。そう思っていたわたしは部活で学校に来るたびに職員室を覗いてみたがタイミングが悪いのかいつも藤堂先生の席は空だった。