あの日溺れた海は、
始業式を終え、課題テストも終えると、HRをしてそのまま放課後となった。帰りの挨拶を済ませ、早々に教室を出る藤堂先生をわたしは早足で追いかけた。
歩幅の広い先生に追いつく頃にはわたしの息は微かに上がっていた。
「藤堂、先生…」
後ろから追いかけられていることに気づいてなかったらしい先生は振り返ると息が上がっているわたしに少し驚いた様子だった。
「あの、えっと、」
写真を渡そうとガサゴソとスカートのポケットの中から封筒を出そうとするが、生徒がたくさんいる廊下で堂々と渡すには少し憚られてポケットから手を出すと、「ここではちょっと…」と言うと、先生は怪訝な顔でこちらを見た。