あの日溺れた海は、
「私にLINE送りました?あ、って。」
「あっ…!」
いろいろな出来事があってすっかり忘れてた。わたしは先生の方に向き直ると、一生懸命訳を話した。
「つまり自分のせいで風邪引いたかもしれないって思って、電話番号から私のLINEを見つけて、ミスタップしたってことですね。」
先生はわたしが焦るあまり支離滅裂な言葉で話したことを要約してそう言った。強く頷くと怒ってないか、嫌われてないか、おずおずと先生の顔を見上げた。
少なくとも呆れたような表情をするのではないかと覚悟をしてると、先生の反応は予想外のものだった。
「それは、どうも。」
小さく笑いながらそう言う先生に安堵と、ときめきを覚えながら「笑わないでください!」と言い返した。
「でも…生徒に勝手にLINE追加されて、迷惑じゃないですか?」
申し訳なさでいっぱいになりながらそう聞いてみたら。
「迷惑じゃないですよ。」
先生はそうキッパリ答えた。
その言葉の通りに受け取ってにっこりと笑うと先生もまた口の端を上げた。調子に乗ったわたしは勇気を振り絞って口を開いた。
「じゃあ、たまに、LINEしてもいいですか?…あ、小説のこととか!数学のわからないところとか…」
言いながらチラリと先生の方を見ると先生は感情の読めない表情をしていた。途端に後悔に襲われる。
「ん〜。たまに、ですね。いいよ。」
あまりにもナチュラルOKが出たので目をぱちくりさせて先生を見つめると、先生から少しぶっきらぼうな「なんです?」が帰ってきた。
先生とLINEできるなんて…夢みたい。
引っ込み思案なわたしだけど…少しだけ大胆になってみてよかった。
先生のこととなると途端に勇気が出るんだ。