あの日溺れた海は、
「武田、さん…?」
特に話したこともないクラスメイトからで少し驚きを覚えた。
わたしが倒れたのを心配してくれたのか、いや、そこまでの仲じゃないけど…と、不思議に思いながらも画面をタップした。
『井上さん、急にごめんね。井上さんって、亮くんと付き合ってるの?』
このメッセージを見て何となく察した。
武田さんは亮のことが好きなんだ。
それで今日お姫様抱っこされてるわたしを見て疑問に思ったんだ。ふう、とため息をついて返事を打った。
『付き合ってないよ。ただの幼馴染!』
1分もたたないうちにブブッとスマホが鳴った。
『そうだったんだ!私実は亮くんの事が好きで…井上さん、亮くんと仲良いからもしかして…と思っちゃって。でもそれならよかった!』
『申し訳ないんだけどさ…亮くんにどうしても近づきたくて、井上さんの事頼ってもいいかな?』
こんなこと言われたら、断ることなんてできない。わたしは『いいよ!』と返信するとスマホをポケットの中に突っ込んだ。
恋する乙女の願いだもん。
わたしだって先生と近づける手段があるなら頼りたいし、気持ちはすごくわかる。
だから快く手を差し伸べた。