あの日溺れた海は、
「みんなどこ行きたい〜?」
5時間目。わたしたちは5組の教室の片隅で話し合いをしていた。
班のメンバーは亮と月と武田さんとその友達の伊東さん、あとは亮の友達の谷くんという半分以上ほとんど話したことない人たちで構成されてる。
社交的な亮がその場を回して話し合いが進んでいく。
「あたし嵐山行きたいな〜。」
月がそう言うと、「いいね〜嵐山。」と亮が賛同した。わたしもうんうんと頷く。
「ん〜あたしは伏見稲荷いきたぁい」
武田さんが少し鼻にかかった声でそう言った。
伏見稲荷も気になってたところだったから頷いて賛同を送った。
「伏見稲荷もいいね。…あ〜、でも嵐山からめちゃくちゃ遠いかも。1日で回れるかなあ…」
亮がそうぽつりと呟くと月ちゃんがにっこりと満面の笑みを浮かべて口を開いた。
「伏見稲荷よりも嵐山の方が今時っぽいカフェとかあるし、ちょっと景色のいいトロッコ乗ったり、金閣寺とかも近いしいいと思う〜ね、はな」
恐ろしいほど完璧な笑顔でそう言ってわたしを見る月にえっとー…と固まってしまった。すかさず武田さんも口を開く。
「伏見稲荷も1000本鳥居とかインスタですっごい人気だし、京都行くならおしゃれな感じよりも古き良き景色を見たほうがいいんじゃないのかなぁ?ね、伊東ちゃん。」
目を大きく見開いて上目遣いで月のことを見る武田さんだったがその目から火花が出てるような幻覚が見えた。
一生懸命首を縦に振る伊東さんに同情の視線を送った。