あの日溺れた海は、
こんなにも幸せでいいのだろうか。

好きな人とクリスマスイブに2人きりで、プレゼントまでもらって。


幸せすぎて明日が怖いくらいだ。…それなのにわたしはわがままだ。


もっと先生の近くにいたい。

先生の心に触れたいって思ってしまった。

気持ちを伝える前に、どうか─
 
 
「…雪だ。」
 
 
その声に、窓の外を見ると微かに白い粒が舞っていた。
 

「すごい…」
 

滅多に降ることのない雪に、わたしは思わず声を上げた。
 

「珍しいですね…。」
 

暫く無心で窓の外を眺めていた。2人の間にも沈黙が続く。
 

こんなに奇跡が重なって、今こうして一緒にいる。

そう感じた瞬間、もう何でもできるような気がした。
 

大丈夫。
 

『華さんが好きになった人でしょう』
 

うん、大丈夫。
 

『伝えることは大事だよ、怖いかもしれないけどね』
 

怖い…けど大丈夫。
 

藤堂先生だから。
 
 
軽く息を整えて、口を開いた。
 

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