あの日溺れた海は、

「…はな。」

そうぽつりと呟くようにわたしの名前を呼ぶ亮にわたしは無言で顔だけ彼の方に向けた。


「はながしたことは、間違ってなんかねえよ。話を聞いてすらくれない藤堂が意地悪なだけなんだ。
…だから、消えたいとか言うな。お前には俺がいる。

そんなすぐに藤堂の代わりとか、なれねえけどさ、」


何か強い意志を持ったような面持ちでまっすぐと前を向きながらそう言う亮に、わたしはただ「ありがとう。」とだけ返した。

亮は一瞬切なげな顔をしたが、わたしは見てないふりをした。






「明日、7:15に迎えに行くな。」


家の前に着くと突然そう言った亮にわたしは「え?」と返した。


「…学校、行きづらいだろ。一人だときついかなって。でも、一緒に行けば怖くないだろ?」


正直図星を突かれたわたしは一瞬迷ったけど素直に亮に甘えることにした。


「よかった。俺も一緒に行きたいしな!」


亮はそう言ってニカっと笑うと「じゃあ!」と言って家の中に入っていった。


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