あの日溺れた海は、
次の日の朝、亮は本当に7:15きっかりにわたしを迎えに来た。
あらあら、うふふ、なんてべたな反応をするお母さんをスルーしてわたしは学校へと向かった。
「…眠れなかったのか?」
わたしの顔を見るなりそう不安そうに言う亮に、わたしは正直に「うん。」と返した。
亮には隠しても無駄だということはわかっているから。
「…そうか。眠たくなったり気分が悪くなったりしたらすぐに保健室に行けよ。あと不眠が長引くなら芹沢先生の―。」
そう言う亮の言葉を制して「いいのいいの。」と少し無理して笑顔を作ると、先に歩き出した。
亮は少しあきれたのかため息をつくとわたしの横に並んで歩き始めた。
高校生になってからは亮の朝練があったり、お互いに恥じらいもあって一緒に登校することはなかなかなかったけど、久しぶりに並んで学校に行くのは楽しかった。
それでも学校の門の前に行くと自然と足取りが重くなる。
なんとなく息苦しくなる。目線も定まらずに揺れ動く。
『関係ないことは慎みなさい。』
昨日の先生の言葉が頭の中で鳴り響いて、さらに呼吸が荒くなっていくのが分かった。
もうダメ。いやだ。いなくなりたい。
そう心の中で呟いてこの場所から逃げ出そうとした瞬間。