あの日溺れた海は、

月の言ってることはなんとなくわかったけど、ただ本心からわたしはそう思った。
本を出しているのはすごいし、賞を受賞しているのもすごい。でもそこに妬んだって何も生まれるわけでもないし。

だったら少しでも自分の作品作りに生かしたい。それだけなのに。


月には理解できなかったようで首を傾げると「ふうん。」と呟いた。



「あ、もういこっか。また後で他のクラスの美化部員が誰だったか聞いとくね。」


月はチラリと時計を確認してそう言うと、立ち上がってゴミ箱にパックを放り込んだ。


「わかった。ありがとう。」


わたしもそう言うと同じようにパックをゴミ箱に捨てると2人でクラスへと戻っていった。



「で、1組の美化委員は玲で、3組はよく知らない男の子で、4組が清河さんっていうギャルみたいな子で、5組は齋藤だって」


放課後の2年5組の教室。
人がまばらになった室内で、わたしは月と一つの机で向かい合って話していた。
昼休みが終わった後、月は自分のクラスの美化委員に聞いてくれたらしい。


「清河さん…。よく知らないなあ。」

清河さんは中学も別で、同じクラスにもなったことない。ただ明るい性格で友達が多かったような。
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