あの日溺れた海は、
ふう、と深呼吸して、口を開いた。
「藤堂先生、井上です。入ります。」
思った以上に声は震えていて、今にも泣き出しそうな声だった。
返事は聞こえなかったが意を決してドアに手を掛けて開くと…
「あれ。」
そこには誰もいなかった。
え?あれ?
またわたしは先生に意地悪された??
また先生はわたしの気持ちから逃げるわけ??
昨日のおかげでずいぶん強気になったわたしは、傷つくどころか怒りを覚えていた。
先生って本当に気まぐれで馬鹿であほでむかつく!!
こうなったらわたしのことをちゃんと振るまで地獄の果てまで追いかけてやる!
と自分でも訳の分からないことを胸に掲げて校内中を探し回った。