あの日溺れた海は、
暫くするとHRが始まりを教えるチャイムが鳴って、それと同時にのんびりと近藤先生が前のドアから入って教壇へ立った。
少ししてから後ろのドアがゆっくり開く音が聞こえた。今までにないくらい鼓動が騒がしくなる。
『好きだ。』
嫌でも昨日の出来事を思い出させるその存在に、叫びたい気持ちを抑えて小さく息を吐くと、一人でこっそり頬を染めた。
「ええ!?!?藤堂先生と両思いになった!?!??!」
月の甲高い声が昼休みの人気のない廊下に響き渡った。
「しっ!声でかい!!」
そう言って月を嗜めるけど、そんなわたしに構わずにやつきながら小突いた。
「一体何がどうなってるのよ〜!!まあいいわ。結果オーライだよね!で、どこまでいったの?キス??それとももっと???」
再び興奮してだんだんと声が大きくなる月を軽く睨むと、月は「ごめんって。」とふざけ半分で謝った。
「キスとか、そういうのじゃないし。…両思いにはなったけど、付き合ってないよ。そういうのは卒業してからだって。」
「ええ〜、何それ。純愛じゃん!ちくしょー!」
そう言ってやけになって叫ぶ月にわたしは思わず吹き出した。
ありがとう、月。ずっと応援してくれて。
無言で暖かく見守ってくれて。