あの日溺れた海は、


「この字!みて!」



腕を引っ張られて連れてこられた場所は、2年2組の教室だった。
月は教室に残っていた女子生徒のワークを広げると赤いペンで書かれている文字を指差した。



「わたし課題の範囲が分からないから、聞いてたの。そしたら、これってさ…!」




この字…。




整っている中にも僅かに癖があるこの字。


紛れもなく赤ペン先生の字だ。




でもどうして、こんな所に?



「この字は─…。」



その名前を聞くと同時にわたしは教室を飛び出した。




通りで気づかないわけだ。
いや気づくはずなんてなかったんだ。



だって…。

< 59 / 361 >

この作品をシェア

pagetop