あの日溺れた海は、
「この字!みて!」
腕を引っ張られて連れてこられた場所は、2年2組の教室だった。
月は教室に残っていた女子生徒のワークを広げると赤いペンで書かれている文字を指差した。
「わたし課題の範囲が分からないから、聞いてたの。そしたら、これってさ…!」
この字…。
整っている中にも僅かに癖があるこの字。
紛れもなく赤ペン先生の字だ。
でもどうして、こんな所に?
「この字は─…。」
その名前を聞くと同時にわたしは教室を飛び出した。
通りで気づかないわけだ。
いや気づくはずなんてなかったんだ。
だって…。