あの日溺れた海は、
「本当にあり得ない!おじいちゃんに言お!」
ぎゅっと拳を握りファイティングポーズを取る喬香をわたしは静かに制止した。
「大丈夫。こういう時のためにスマホにデータ残してるんだし。」
思ったよりも震えた声に自分で驚きながら平静を装った。
正直、関わるのも面倒臭い。問いただしたところで白状してくれるかもわからないし、白状したところで破かれたものは元には戻らない。
なんでこんなことをしたのか理由が分かっても心が晴れることはないだろうし傷ついた心は戻らない。
それに加えて藤堂先生が赤ペン先生だったという事実で頭の中が混乱していて今は何かを考えられる状態ではなかった。