あの日溺れた海は、
放課後。

進路相談室は化学室や音楽室などの特別教室がある棟の隅に部屋を構えていた。


教室から歩いてやっとたどり着いたその場所は外から見ると薄暗くて不気味だった。

帰りのHRが終わった後、おじいちゃんに詳しいことを聞いたら、鍵は常に開いているみたいで、中にあるパソコンで自由に進路について調べることができるらしい。


おそらく進路希望調査の紙は今日一斉に2年の全クラスに分けられたのだから、誰かしらが中にいるのだろうと想定しながらゆっくりと扉を開けた。

建付けの悪い木製の扉をガタガタと音を立てながら開けると、古い紙の匂いが鼻を突いて、自然と部室を思い出した。

予想とは違って誰もいない相談室に呆気を取られながらも室内を見渡した。

木製の棚にぎっしりと詰められた背表紙が日に焼けた紙のファイル。
某有名大学の古い問題集。

その中で比較的新しそうなデスクトップパソコンぼ白さが浮いていて実に奇妙だ。

日当たりは最高だけど、窓から射す暖かな光は空中に舞う大量のほこりを照らしている。


想像していた進路相談室というものとのギャップに驚きながらもゆっくりと室内を進んでいくと躊躇いながらもパソコンの前に座った。
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