エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
Honey.1 断れないプロポーズ
 リビングにある掛け時計にチラチラと視線を送り、時間を気にしながら朝食の準備を進める。

 慣れないアイランドキッチンに苦戦したのは最初だけで、今では収納など私の使いやすいようにカスタマイズしていた。

 時刻は午前六時三十分。今日もぴったりだ。

 私は手を止めて、白を基調とした北欧テイストのキッチンから続くリビングを後にし、寝室へと向かった。

 間宮(まみや)日奈乃(ひなの)、二十五歳。私のモーニングルーティンはここ最近ですっかり定着した。

 朝起きて身支度を整えてからスキンケアと軽くメイクをして、背中まで伸ばしている癖のある長い髪をまとめ上げて気合いを入れる。

 二重瞼のくりっとした瞳は、子どもの頃は可愛らしいとよく褒められ、自分でも長所だと思っていたのに二十歳前後から幼く見えるコンプレックスになりつつあった。

 雰囲気か顔の造りのせいか、おっとりしていそうとよく言われ、身長も百五十二センチとあまり高くないのも相まって、いつも実年齢より下に見られがちだ。

 おとなっぽいメイクや服装を研究しているが、なかなか活かせていない。ここまで外見を気にするようになったのは、間違いなく彼の影響だ。

 ドアノブに手をかけ、そっと中を覗き込む。三月半ばを過ぎ、空が白む時間もわずかに早くなったが、遮光カーテンの閉じたこの部屋はいまだに夜の世界だ。

 ドアの隙間から光が差し込み、その先を追いかけるように私はいつもの足取りで中へ進んだ。
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