エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
「心配ない。早急に対応してもらいたい案件があったんだ。こういうとき時差があるのは、逆に助かる」

 軽く髪を搔き上げ、余裕たっぷりに話す彼は、仕事の顔をしている。

 彼は間宮稀一、三十二歳。すらりと背が高く、モデル顔負けのスタイルのよさは昔からだ。

 切れ長の瞳にすっと通った鼻筋、シャープな顔立ちは理知的な彼の雰囲気と相まって常に人目を引く。弁護士という職業にぴったりだ。

 私は気持ちを切り替え、お決まりの台詞を口にする。

「あまり無理しないでね。朝食できているから」

 稀一くんは、起床後シャワーを浴びて着替えてから朝食をとる。彼の朝のルーティンはもう把握した。

 彼を起こす役目を終え、ベッドから離れようとしたとき、不意に手を取られる。そのまま勢いよくうしろに引かれ、よろけそうになった私はベッドサイドに腰を落とした。

 振り向く間もなく背後から抱きしめられ、密着した箇所から体温が一気に伝わる。

「毎朝ありがとう、奥さん」

 耳元で優しく囁かれ、脈拍が加速する。なにか返さなくてはと思うのに、恥ずかしさで気の利いた言葉が浮かばず、小さく頷くのが精いっぱいだった。顔が見えないのがいいのか悪いのか。

「ひゃぁ」

 次の瞬間、耳たぶに軽く唇を寄せられ私は反射的に声を上げた。不意打ちもいいところだ。

「相変わらず、弱いな」
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