エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
 ところがキスの合間に彼の手がカットソーの裾から侵入して、直に肌に触れたときには驚きで目を見開いた。

「あっ……ん、んん」

 すぐさま口を塞がれ、声にならない。稀一くんの手は止まることなく、脇腹や背中に指先や手のひらと触れ方に緩急をつけ、刺激を与えていく。

 不快さは微塵もないのに、焦燥感にも似た切なさで苦しくなる。

 やめてほしいような、もっと触れてほしいような。

「まっ、て。ここは」

 キスを中断させ、切れ切れに訴えかける。裾がたくし上げられ、いつのまにかソファに足を乗り上げたおかげでスカートをはいていた私はずいぶん、あられもない姿になっている。

 その状況を部屋の電気が煌々と照らしていた。なによりここはリビングだ。

「ん、わかってる。でも正直今は余裕がないんだ」

 私の意を汲んでくれると思いきや、稀一くんは私の訴えを否定するかのごとく耳元に唇を寄せ、キスをして甘く囁く。

「二か月もひなに触れられないなんて耐えられない」

 つまり今はなにを言っても止める気はないらしい。でも結局私も強く抵抗できない。会えなくて触れられずに寂しいと思うのは一緒だから。

 それに、こんなふうに切羽詰まった稀一くんを見られる機会はなかなかない。これも妻の特権かな?

 私は言葉を発する代わりに、思い切って自分から彼に口づけた。
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