エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
 シャワーを浴びて時計を眺める。今、こっちは夜だからあちらはお昼だ。おそらく仕事中だろう。

 私は両手を上に伸ばして、改めてテレビのリモコンを手に取る。録画しておいたドラマを観よう。明日は土曜日で久々に父のお見舞いにゆっくり行ける。

 私がなかなか病院に足を運ばない親不孝娘なのではなく、病室に行っても父がいつも秘書や部下、稀一くんのお父さと仕事のやり取りをしているから、私はどうしてもお邪魔になるのだ。

『あなたと結婚したのは、あなたのお父さまに言われたから。逆らったら父と母はどうなるかを考えたらこうするしかなかったの』

 再生したドラマからは、前回のラストシーンから始まった。主人公カップルよりもすっかり同僚夫婦の行く末にハラハラさせられている。

『ねぇ、もしも好きな人ができたから私と別れてほしいって言ったらどうする?』

 そう告げた彼女が夫に、ついに結婚の真相を語り出した。夫側の彼の強いアプローチで付き合い、結婚したふたり。

 夫の実家は有名なアパレルブランドをいくつも経営する大企業で彼はいわば御曹司だった。けれど夫に傲慢さなど微塵もなく、純粋に彼女が好きなのは視聴者にはわかっていた。

 浮かない妻の原因は夫の父親が手を回して事態を複雑にしていたことにあった。

 妻側の事情を知らなかった視聴者としては、つれない態度をとり続ける彼女を理解できなかったが、そんな真相があったとは。

 夫役の彼と供に衝撃を受ける。一筋縄ではいかないのがドラマとはいえこれは今後も見逃せない。
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