エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
 今日の稀一くんは濃紺のシアサッカージャケットに白のインナー、チノパンとシンプルだが清潔感のあるコーディネートだ。

 相変わらずなにを着ても様になる。涼しげな横顔はドキッとするほど綺麗で、運転するときにかける眼鏡は彼の理知的な雰囲気を増幅させる。

 対する私はゆったりとしたマキシ丈のワンピースで着心地が楽なものを選んだのであまりお洒落さはない。デートだとしたら気を抜きすぎているファッションだ。

 交際ゼロ日で結婚を決めたので、私はデートというものがよくわかっていない。これもデートというよりただの買い物だよね。

 実のところ、稀一くんの過去の恋愛について私はほとんど知らない。父親経由で彼女がいるとかそういう情報は聞いたことがあるけれど、あくまでも稀一くんが学生のときの話だ。

 アメリカに留学しているときや社会人になってからはどうなんだろう?

 最後に彼女がいたのはいつ? 少なくとも私に結婚を申し込んだときは、恋人はいなかったんだよね。

 この助手席からこうして彼の横顔を見つめた異性は何人くらいいるのかな?

「俺の顔になにかついてる?」

 信号が赤になったらしく、不意におかしそうに尋ねられた。私の不躾な視線はバレバレだったらしい。
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