エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
Honey.5 変わらない幸せ
 七月に入り、二週間に一度だった健診が次回から四週間に一度とおよそ一ヶ月後になり、かすかに緊張と不安を覚えた。

先生の「順調ですよ」の言葉とお腹の赤ちゃんの生命力を信じて過ごしていくしかない。つわりの症状もまだ続いていたが、その日は突然やってきた。

「稀一くん、大変!」

 土曜日、仕事で出勤していた稀一くんが帰宅したのと同時に私は玄関に駆け寄った。

「日奈乃、家の中とはいえ走るなとあれほど」

「あのね、今日、なんだか急に調子がよくて……吐き気がないの。これが安定期かな?」

 興奮気味に捲し立てるが、稀一くんはあまりピンときておらず目を丸くしている。無理もない、私自身も初めての感覚だ。

 稀一くんは、私の頭をそっと撫でた。

「日奈乃が辛くなくなったのなら、よかった。でも無理は禁物だ」

 たしなめられつつにやけそうになるのを堪えて、小さく頷く。

「うん。あ、夕飯できてるよ」

 結局、結人のところには行かず私はここで過ごしていた。結人や伯母に心配されたが、産前産後でまたお世話になる可能性も伝えたうえで今はとりあえず夫婦で乗りきるつもりだと話した。

 それを聞いた叔母はどこか嬉しそうで、対する稀一くんは過保護さが日々増している気がする。
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