エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
 こういうのは年長者のほうが詳しいだろうし。もしかしたら一緒に行く流れになるかもしれない。

 父や稀一くんのご両親に妊娠を伝えたらものすごく喜んでくれた。今まで以上に気にかけてもらっている。

「また聞いておくよ」

「うん。お願い」

 話がまとまり率先して片付けようとする稀一くんを慌てて制する。

「稀一くん、今日は調子がいいし私がするから」

 といっても食洗機に使用済みの食器を入れるだけなんだけれど。

「お風呂、沸かしているから先にどうぞ」

 立ち上がり、食器をまとめてシンクに運びながら声をかける。仕事で疲れているだろうから稀一くんには先に休んでほしい。

 ところが稀一くんは残りの食器をシンクに持ってくると、今度は慣れた手つきでダイニングテーブルを拭きにかかる。

「日奈乃の体調は関係なく、できることはするよ。それに、ふたりでしたほうが早い」

 ぽかんとしている私に稀一くんが答える。

「……うん、ありがとう」

 つわりが治まって、少しは稀一くんの負担を減らせるかな?と意気込んでいたけれど、その考えは逆に彼に失礼かもしれない。

 夫婦だからこうやって助け合ってやっていくのは当たり前なんだ。

 ふと心が軽くなって温かい気持ちになっていると、テーブルを拭き終えた稀一くんが近づいてくる。

「体調がいいなら、日奈乃も一緒に入ろうか?」

 からかい混じりに提案され私は目をぱちくりさせた。
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