ボトルメール
「うん。プロポーズは一回なんて規定はあったかい?」
「ないね。」
それから少し無言で歩いて朱里さんの家を少し通り過ぎたあたりで俺は再び楓に話しかけた。
「じゃあ、新婚旅行はどこがいい?」
ある程度貯金があるとはいえ、これからのことを考えたら無理なのかもしれない。でも、父さんの言った『人生で一度しかない』と言う言葉がフラッシュバックして、思わずそんなことを聞いていた。
「私、一回ハワイに行ってみたかったんだよね。」
「じゃあ、そこにする?」
「いいの?もちろん私もお金出すからね。私だって大学生活でバイトしてたから貯金ならある程度はあるから!」
正直、ここはカッコつけて『俺が全部出す』と言いたいところだが、本当にピンチなので俺は楓に甘えることにした。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「じゃあ、ハワイに行こう!楽しみだね!」
「そうだね。」
でも正直楓とならどこへ行っても楽しい気がする。ども、そんなことは恥ずかしくて言えなかった。
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