ボトルメール
「なにぶんまだまだ未熟な二人でございますが、どうぞこれからも皆様方のお力添えを賜り、温かく見守っていただければと思います。
簡単ではありますが、両家を代表し、これにてお礼の言葉とさせて頂きました。
本日は誠にありがとうございました。」
彰は再び頭を下げた。その瞬間拍手がドカッと起こった。いつの間にか俺の目からは涙が出ていた。
この数年間の思い出全てが頭をフラッシュバックしたせいだろう。いくらハンカチで拭いても涙が止まることは無かった。
「もう…何泣いてんのよ」
すかさず楓が俺の顔を見て突っ込んだが、そんな楓の目からも涙が出ていた。
俺たちは顔を見合わせて笑った。大きな声で笑った訳では無い、ただただクスッと笑った。これでいいんだと思う、いつも大きなことをしなくてもいいんだ。それが俺たちなのだから。
「続いて、新郎による。スピーチです。」
俺は牧師さんに呼ばれたので、起立してからポケットから紙を取り出し、楓からマイクを受け取り、一度深呼吸をして、スピーチを喋った。
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