相思相愛マリアージュ(後)~君さえいればそれでいい、二人に家族計画は不要です~
それから二週間後―――・・・

杏南さんは酷い悪阻で入院して来た。

俺はVIP専用病棟の回診で彼女の病室にも足を運んだ。

病室に入ると真っ先に近寄って来たのは俊樹(トシキ)君だった。

「びょういんのせんせいだよね・・・ママとあかちゃんはだいじょうぶ?」

俊樹君は円らな瞳に不安そうな色を宿して、俺に問いかけて来た。

「大丈夫だよ…俊樹君」

「すいません…槇村先生」

下の紬(ツムギ)ちゃんの相手をしていた長谷川副社長も慌てて歩み寄って来た。

「…いえ・・・」

俺は気を取り直して、杏南さんのベットに歩み寄り、彼女の様子を伺う。

「気分はどうですか?」

「あ…槇村先生…こんなに気持ちが悪いのは…初めてです」

上二人の時は寝込むほどの悪阻の症状はなかったよう。元々、彼女のお産は戌のお産で、超安産だった。
お産で楽している分、三人目の悪阻は苦しいようだ。



< 133 / 212 >

この作品をシェア

pagetop