相思相愛マリアージュ（後）～君さえいればそれでいい、二人に家族計画は不要です～

彼はクセのないサラサラした黒髪を掻き上げて、フーッと息を吐いた。

「私は槇村花音…急に恋人の振りして貰って、ゴメンなさい…」

ほんの一瞬だけど、彼の唇の温もりを感じ、頬を染めながら謝った。

「俺は長谷川俊樹(ﾊｾｶﾞﾜﾄｼｷ)…彼は君の恋人だけど…あれでいいのか？君の勢いに押され、思わず恋人の振りをしてしてしまったが…今なら、間に合うんじゃないのか？」

「いいのよ…私に内緒でもう一人の彼女とプーケットに行って…その帰国現場を押えて、別れを告げたつもりだったから・・・でも、未練がましく追い駆けて来て…貴方の手を借りてしまった…急いでるのに…ゴメンなさいね…」


「・・・別に急いでいない…良ければ、付き合えよ…花音」

「えっ？あ・・・」


長谷川さんは初対面なのにナチュラルに私の名を呼び、誘って来た。

百八十センチは越えてる長身。
彼のスタイルに誂えたダークブラウンのスーツ。
聡明な黒い瞳に高い鼻梁。
キレイに整った顔立ちで、周囲の人達の視線を奪っていた。

そんな彼に誘われて、断る女は居ない。