相思相愛マリアージュ(後)~君さえいればそれでいい、二人に家族計画は不要です~
「奥さんは元気ですか?」

「え、あ・・・」

筒見社長は遥の妊娠を知っていた。
「・・・今は実家に帰っています…」

鬱になりかけた遥を一人にはしておけず、やむを得ず実家に帰らせた。

「大変ですね…」

「いえ・・・」

俺と遥はパパとママにはなれなかった。
でも、俺の仕事は産科医。

俺に赤ちゃんを取り上げて欲しくて、東亜に妊婦さん達が押しかけて来る。

不可能を可能にする。

そう言いながらも、一番救いたかった聖弥の命を救えなかった。



「・・・まだ、チャンスはあるでしょ?」

筒見社長も脳腫瘍を患い、生殖機能を失った人。
兄貴の病院で凍結精子を使用して、体外受精で赤ちゃんを授かった。

俺達と同じ状況での妊娠。

「チャンスがあっても…俺のメンタルが持ちませんよ…」

「槇村先生…」

「すいません…俺と遥は二人家族でいいです・・・」

遥さえいればいい・・・

「ほら、戻らないと」

俺は筒見社長の背中を押して、袖から追い出した。



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