相思相愛マリアージュ(後)~君さえいればそれでいい、二人に家族計画は不要です~
「俊樹君か…いい名前だ…名前がお決まりなら、後で看護師に伝えておいて下さい。そうだ…長谷川副社長…後で医局にお立ち寄りください。出生証明書をお渡ししますので」

「分かりました。ありがとう御座います」

俺は二人に会釈をして新生児室を出て行った。

二人家族が三人家族か・・・
目の前でその姿を見せらせ、つい感傷に浸ってしまった。

遥は旧姓で仕事を始めるし。

俺達は着実に離婚への階段を上がっていた。

何で、俺達だけがこんな目に遇うんだ!?

俺は誰もない場所で壁に拳を打ち込み、行き場のない怒りを紛らせていた。

聖弥・・・

俺の首許にぶら下げたPHSが鳴り響く。

「産科医の槇村です…」

――――槇村先生ですか?上村です…産科医局に長谷川さんがお見えになっています。今、何処にいらしゃるんですか?

「あ…ゴメン…直ぐ行くから…」

俺は慌ててPHSを耳に当てたまま、医局に戻った。

「申し訳ありません…自分で立ち寄れと言っておきながら…」

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