従者は惜しみない愛を捧げる―――流浪の落ち延び姫と双頭の獅子
「リナルド、出立はいつですか?」
アマ―リアがまっすぐな視線を向けると、リナルドはたじろいだように目を見開いた。
「……お察しでしたか」
「それを伝えに来たのでしょう? 用意はできています」
先を促そうとして、アマーリアは「いつものことですもの」と口角を上げてみせた。
「早い方がいいのではなくて? あちらの密偵は優秀だから、ここもすでに突き止められているのでしょう?」
「お詫びの言葉もございません。妃殿下のご出産を控え、詮議がずいぶん厳しくなりましたので」
リナルドは悔しそうに唇を噛んだが、アマーリアはとうに覚悟ができていた。
住まいを替えるのは、これで何度目になるだろう?
反乱軍に占拠された城を落ち延びてから、アマーリアは王女という身分を隠し、何度となく住まいを変えてきた。国境の警備が厳重なため、しかたなく国中をさすらい、なんとか今日まで追跡から逃れてきたのだ。
数ヵ月前に地方の村から王都に戻ってきたのも、あえて敵の近くに身を潜めることで裏をかこうとしたためだった。
アマ―リアがまっすぐな視線を向けると、リナルドはたじろいだように目を見開いた。
「……お察しでしたか」
「それを伝えに来たのでしょう? 用意はできています」
先を促そうとして、アマーリアは「いつものことですもの」と口角を上げてみせた。
「早い方がいいのではなくて? あちらの密偵は優秀だから、ここもすでに突き止められているのでしょう?」
「お詫びの言葉もございません。妃殿下のご出産を控え、詮議がずいぶん厳しくなりましたので」
リナルドは悔しそうに唇を噛んだが、アマーリアはとうに覚悟ができていた。
住まいを替えるのは、これで何度目になるだろう?
反乱軍に占拠された城を落ち延びてから、アマーリアは王女という身分を隠し、何度となく住まいを変えてきた。国境の警備が厳重なため、しかたなく国中をさすらい、なんとか今日まで追跡から逃れてきたのだ。
数ヵ月前に地方の村から王都に戻ってきたのも、あえて敵の近くに身を潜めることで裏をかこうとしたためだった。